ギフティッド研究の角谷詩織氏が翻訳された
『わが子がギフティッドかもしれないと思ったら』
勘違いされやすいギフティッド児のあれこれ、ギフティッド児とは“本当は”こういう人間だということを、著書より抜粋してご紹介します。
- ギフティッドとは?(wikipedia)
- 全米ギフティッド協会のギフティッドの定義
- ギフティッド児の神話
- ギフティッド児の典型的な例
- ギフティッド児への支援
- ギフティッド児の特性
- ギフティッド児のもつ「5つの過興奮性」
- 五つの過興奮性
- 秀才児=ギフティッド児ではない
- さいごに
ギフティッドとは?(wikipedia)
ギフテッド(Gifted)とは、先天的に、平均よりも、顕著に高い知性と共感的理解、倫理観、正義感、博愛精神を持っている人のこと。外部に対する世間的な成功を収める、収めないにかかわらず、内在的な学習の素質、生まれつきの高い学習能力や豊かな精神性を持っているということである。
ギフテッドwikipedia
本書では「ギフティッド」表記なので、「ギフティッド」に統一します。
全米ギフティッド協会のギフティッドの定義
ギフティッドの定義とは?
・知的能力全般
・特定の学問領域
・創造的思考
・リーダーシップ
・ビジュアルアーツやパフォーミングアーツ
日本ギフティッド協会
Quantitative Assessment (定量評価)
・WISC-IV 知能指数テスト
・WPPSI-IV 知能指数テストQualitative Assessment(特性評価)
Characteristics of Giftedness Assessment(ギフティッドの子供達が持つ特徴の評価)
・Advanced Langauge: (豊富な単語量で複雑な文章を作れる)
・Analytical Thinking: (関係性やパターンを識別できる)
・Meaning Motivated:(好奇心、突き進む力、理解力、記憶力)
・Perspective:(想像がつかない、普通でない視点)
・Sense of Humor: (複雑なユーモアを理解する)
・Sensitivity: (正義や公平という事へ敏感)
・Accelerated Leraning: (年齢より上の知識や情報を理解できる)
日本ギフティッド協会
ギフティッド児の神話
日本では、「ギフティッド」という言葉の『本当の』意味を、ほとんどの人が知らない。
ギフティッド児は非常に稀にしかいないと思われがちだが、実は広く一般に考えられているよりももっと高い割合でギフティッド児は存在する。
以下は「ギフティッドにまつわる神話」である。
・12歳で大学入学する
・学校では特別な支援はいらない
・自分でその力を伸ばしていける
・ギフティッド児はあらゆる学問でギフティッドだ
・子どもはみなギフティッドだ
・ギフティッド児は将来卓越者になる
・ギフティッド児に学習上の困難は見られない
・ギフティッド児は情緒や対人関係の問題を抱えることは滅多にない
・ギフティッド児の育児は他の子よりも手がかからない
これらは“神話”である。
もちろん中には手のかからないギフティッドもいるだろうが、多くのギフティッドがこれらと逆であると認識して欲しい。
ギフティッド児の典型的な例
激しさ、繊細さ、完璧主義、睡眠の少なさ、アレルギー
学業不振、完璧主義、やるべきことの先延ばし、仲間や兄弟にかかわる困難、抑うつ、青年期の自殺リスクが高い。
これらはギフティッド児の多くが持つ問題であることを知らない人は多い。
ギフティッド児への支援
成し遂げることより、その子に価値があるということを、ギフティッド児本人が理解できるように支援する。
他者に対する忍耐力や理解を促すように取り組む。
外では過剰に刺激を受けとってしまうので、家は安全基地でなければならない。
他者より優れているわけではない、「ある分野において秀でている」
このような捉え方をすることで、ギフティッド児はエリート主義に陥ることはなくなる
ギフティッド児の親の特徴
激しく熱心、ときに性急である。
熱心すぎて全てを一気に取り組まないようにして欲しい。
ギフティッド児の特性
・並外れた言語能力
ムッとした、カッとしたの違いや、知る、悟る、の違いがわかったりする。
単語を絶対的に正しく使うよう要求したり、抽象的概念の理解力が高まり、相手に伝えるなど。
・並外れた記憶力
・強烈な好奇心
・多岐に渡る興味関心
非常に高度で多岐に渡るか、1つのことに全身全霊を傾ける子もいる
・試したがり
・強烈なイマジネーションと創造力
ギフティッド児には、想像上の友達(イマジナリーフレンド)がいることが非常に多い
・非凡なユーモアのセンス
その強烈なイマジネーションと創造性で、8~10歳までに自分でなぞなぞやダジャレを作ることも。
ギフティッド児は、ことば遊びやおやじギャグが大好きだ。
ユーモアセンス、ジョークやダジャレには、周囲の大人はうんざりすることも多い。
・納得できる理由や理解を求める
並外れた創造力のために、ギフティッド児は慣習やしきたりに疑問を感じやすい。
「どうして○○の時は○○するの?」に対して「そういうもの」に納得はしてくれない。
ギフティッド児は大半の人とは異なるレンズを通して世界を見ている。
・自分や他者にいたたまれなくなる
ギフティッド児はその激しさから、周囲を巻き込むほど驚異的に物事にのめり込んでいくが、同時に気を急いてしまいもする。
ギフティッド児は、なぜ他の人が自分の興味関心と同じことにのめり込まないのか理解するのに、通常よりも多くの人生経験を積まなければならない。
激しさと完璧主義の理想により、自分自身にいたたまれなくなる。
ギフティッド児の幼児は自分の微細運動能力にうんざりすることも多い。
自分が何を作りたいか、何を描きたいか、何を書きたいかがわかっているのに、自分の指が思い通りに動かないとき、彼らは非常に強いフラストレーションを感じる。
・集中力の持続
注意持続時間がとても長い。
彼ら自身がその時興味のあることに対する集中力は高い。例えば、絵を描くことを何時間でも集中できるが、そのときは家のお手伝いなどは「忘れて」おり、あなたの呼ぶ声も聞こえてすらない。
長時間粘り続けるという意志の固さは類い稀なる才能である。
・複雑な思考
複雑なルールを作りたがり、仕切りたがる。
ルーティーンワークを退屈に感じやすい。
課題が簡単すぎると課題を放棄する。
・社会的・政治的問題や不当への関心
世の中の「ルール」、特に公正さの問題に関心を向けるようになる。
長男いちは、2歳頃から4~5歳頃まで、道端に落ちているゴミを見つけては「アカンねぇ」と言い続けてきました。
ゴミを触ろうとすると、「ゴミはお日様の光で分解されて、身体に悪いものが出てくるから、触らないようにしようね」と小さい頃に言ったからか、触ることをせず指を指して「アカンねぇ」と言うようになりました。
そして最近の数ヶ月前、療育の帰りに歩いて帰っていたら、ゴミを手で拾い始めました。
始めは「汚いよ~」と注意しましたが、まだ集めようとするので(長男は一回決めたら止められない)、どろどろになっていないゴミだけ許可することにしました。
トングとゴミ袋持ち歩くべきなのか…
かたや次男は何度言ってもゴミを触りに行き、ゴミに砂や水を入れて遊び始めます。
私も子どもの頃から、世の中のルールに疑問を持ったり、公平・平等であることをいつも考え、心の中は正義感に溢れた子どもでした。
殺人や事故のニュースが流れると、考えたようにジッと見つめる長男を見ると、私と同じような「公正さ」「正義」の意志をいつも感じます。
・繊細さ
聡明な子どもたちほど繊細な傾向があることが研究によりわかってきた。
ギフティッド児は周囲の状況をより細かく察知し、それにより強く反応する。
自身の感覚に敏感なことが多く、とても感情的。
状況を頭で理解できていても、その悲しみを感情的に受け止めることができずにいる。あるいは、まだ情緒的な準備ができていないのだろう。
・激しさ
ギフティッド児のあらゆる特性の根本に流れているのが「激しさ」であり、これが最も重要な特性だろう。
ギフティッド児はあらゆることにつけて、人一倍猛烈だ。
何かをなすなら猛烈に、何かを信じるなら猛烈に、主張するのであれば猛烈に主張する。
ギフティッド児は『やるべきことは、やりすぎるべし』がモットー?
激しさは癇癪、兄弟間の張り合い、大人との衝突など、あらゆるところに浸透している。
ギフティッドの男児は非常に深く眠るため、夢遊病、おねしょ、夜驚症になりやすいという専門家もいる。
長男は発達支援の場でも「エネルギーが高い」と幾度となく言われてきました。
内包したエネルギーが強く、感情の昂りに任せて動き回ったりお喋りします。
・白昼夢
ギフティッド児は激しさゆえに、しばしば我を忘れるほど物思いにふけったり、白昼夢を見たりする。
これらのギフティッド児の特性は、親、教師、ギフティッド児本人にとっても厄介でイライラさせられる。
しかし同時に、状況次第では有用なものにもなる。
親をはじめ周囲の大人は、ギフティッド児がこれらの特性を見せた時には叱らないよう気をつけねばならない。
いずれの特性も、ギフティッド児がギフティッド児たる本質で変えられない特性だ。
我々はそれを受け入れ、尊重しなくてはならない。
ギフティッド児のもつ「5つの過興奮性」
この「過興奮性」は、ギフティッド児の大きな強みの源であり、また同時に大きなストレスやフラストレーションの源、批判される原因にもなる。
以下はギフティッド児の受ける批判の言葉
・いい加減、どうして落ち着けないの?
・何から何まで心配しすぎ!
・一つのことを続けられないの?
・全く繊細すぎて大げさなんだから!
・要求が高すぎるの!
・全く、後先考えないんだから!
・満足ってことを知らないの?
このリストにあげられている行動は、全て過興奮性に直接起因しています。
大半のギフティッド児は大人になるまでに自分の過興奮性とうまく付き合う術を身につけるものの、このような尋常でない過興奮性は通常成長とともに消えるものではありません。
上記にあげた言葉たちは、本書に書かれていた一言一句変えていないのですが、全て長男に言ってしまっている、または私の心の中でいつも叫んでいることばかりです(笑)
長男は何事にも「猛烈」であり「過ぎる」ので、親である私たち夫婦はその「激しさ」に疲れてしまいます。
五つの過興奮性
過興奮性のことを「過度激動=OE」と
することもありますが、本書ではそのまま「過興奮性」と記載されています。以下では時々「OE」を使います。
・知的過興奮性
好奇心、鋭い質問、集中力、問題解決力、論理的思考ーこれらすべてが知的過興奮性のサインや現れだ。
途方もなく活発な知力を持ち、知識の習得に貪欲で、理解や真実を追求し、問題解決に向けて努力を惜しまない。
新しい考えを知ることがいかに刺激的で気分爽快であるかを話したりする。
子どもの頃は矢継ぎ早に質問し、成人後は内省的になり、焦点化、集中力、問題解決力を要する知的な難問を好むようになる。
道徳的問題や公正さの問題に関心を向ける独立した思想家・観察者だ。
知的OEは、オリラジのあっちゃんを思い浮かべました。
・想像の過興奮性
想像の過興奮性を持つ人々は複雑な構想を思い描くのが好きだ。
それはたいてい壮大なドラマを伴う。
豊かなイマジネーション、空想遊び、イマジナリーフレンド、アニミズム思想、白昼夢、ドラマチックな感じ方、メタファーを用いること全てが、聡明で創造性溢れる子どもにとってとても魅力的だ。
・感情の過興奮性
極端で複雑な感情や強烈な感覚を伴い、親がまず気づくことが多い。
他者の幸福を過剰に心配し、周囲の環境に対する関心(や反応)が強い。
人、場所、物に強い感情を伴う愛着を抱くため、大袈裟だと批判されることも多い。
彼らの強烈な感情は、思いやり、共感性、繊細さ、そしてときには怒りとなって現れる。
感情の過興奮性を持つ子どもは、ゲームに負けた、仲間外れにされたと感じた、なにがなんでもいちばんになりたい、思うようにいかないなどで、癇癪を起こして激怒することがある。
周囲の大人からすると、彼らの感情は極端で困惑するほどのものだろう。
青年期後は、自分の理想と繊細さを人々と分かち合えないとわかると深く悲しみ、ときには世を拗ねたようになったり、怒ったりすることもある。
極端な感受性や、世の中の不正などを含む物事や、他者への感情への強烈な反応は、彼ら自身にとって苦痛や恐怖になりうるだろう。
嬉しいも悲しみも怒りも、全てメーターを振り切った感じで表現します。
・精神運動の過興奮性
精神運動の過興奮性のある子どもは、「活発でエネルギッシュ」だ。
動くこと自体が大好きでエネルギーが有り余っている。
このエネルギーは、早口、燃え上がるほどの熱中、猛烈な身体活動、とにかく動きたいという欲求として現れる。
感情が張り詰めるとしゃべらずにはいられなくなったり、動かずにはいられなくなったりし、神経症的習癖、激しい衝動性、強迫的行動が現れ、非常に競争的になったり不作法になったり感情をあらわにすることもある。
周囲は気がどうにかなりそうになるかもしれない。お願いだから、黙ってじっとしてて!
精神運動のOEを持つ子どもは、ADHDと誤診されやすい。
多くの成人はエクササイズをしたり、編み物をしたり、貧乏ゆすりをしてコントロールをするが、子どもは自分でそのような選択ができないので、選択肢を与えるようにしなければならない。
誰かが聞いていないと嫌なので、私か主人の近くで「おしまい」と言うまで永遠喋り続けます。
トイレもゆっくり入れません。助けて!
秀才児=ギフティッド児ではない
秀才児とギフティッド児の違いは『深さ』『激しさ』だ。
・質問スタイル
秀才児→答えのある質問
ギフティッド児→抽象的な考え、概念、理論について
・習得の早さと概念の応用
秀才児→段階を踏む
ギフティッド児→ステップ2からいきなりステップ10へ飛躍することも。
問題の解く過程を紙に書こうとしないなど。
・感情の様相
秀才児→一般的な感情反応
ギフティッド児→増幅された、全身全霊の感情、他の思考の入る余地なくなる。
数日から数週間、強烈な心配が思考に侵入することも。
・興味関心の程度
秀才児→多くのことに興味がある
ギフティッド児→強烈な興味関心を示し、惹き付けられたことに没頭
・言語能力
秀才児→新しい語彙を簡単に習得
ギフティッド児→並外れた量の高度な語彙を用いることが多い。
他者の言葉のニュアンスを理解し、ことば遊びやダジャレを好み、年上と議論する。
・公正さへの関心
秀才児→何かについてしっかりとした考えを述べることができる。
「○○ちゃんのケーキは私のより大きい」という個人的な状況に関係している。
ギフティッド児→グローバルな視野で考える。
戦争、環境問題、人道的問題などに関する複雑な道徳的・倫理的疑問の隠蔽を感じとり、自らの見解を熱烈に主張する。
私は小学校の道徳の授業のときは、話の内容をいつも強烈に受け入れてきました。
道徳の話を聞き、悲しみ、驚き、毎回胸を揺さぶられていました。その度に苦しい気持ちになるのですが、嫌な授業だと思わなかったです。
さいごに
ギフティッドについて、遠い存在だと思って知らないことばかりでした。
ギフティッドの根本は「激しさ」と「深さ」です。
秀才児のように「いい子」でいられない子がほとんどで、周りの環境を整えてあげないと、不登校や鬱になるリスクも高く、頻繁に癇癪を起こしてしまい、親の手を煩わせることが多いと言われています。
アメリカでは、「スピリッツ・チャイルド」と呼ばれる概念を提唱している心理学者もいますが、そちらはあまり日本に情報がありません。
長男はこの本に記載されている、過興奮性や今回書ききれなかった「非同期発達」や、何においても「激しい」特徴はピッタリ当てはまりました。
私たちの子なので高IQは望めませんが、創造性という面では何か持っているんじゃないかと思っています。(しかし発達性協調運動障害のせいでそれを表現できない…)
しかし、どちらかというとギフティッドのような「突出した優秀な才能」というよりは、「スピリッツ・チャイルド」や「HSS型HSC」の方なんじゃないか?と思っています。
もう少し勉強する必要がありそうです。
お読みいただきありがとうございます。
ギフティッド2Eについてとても理解しやすかったサイト
日本でギフテッド教育を行う学校に聞いた、教育の内容や課題、才能の伸ばし方とは | ソクラテスのたまご
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