ADHD診断済であり、HSC気質がとても強い長男が抱える問題は大きい。
発達が気になる子の特徴として、以下のような困難を抱えている子が多くいます。
発達障害やギフテッド、アメリカの心理学研究の一つである『スピリッツ・チャイルド』という考え方のような少数派の子ども達の中には、このような困難を抱えている子どもがいます。
上記の発達の困難さに関して、長男も結構な数があてはまるのですが、中でも長男の最重要課題は『感情のコントロールが苦手』なことだと、兼々考えておりました。
こういった面を改善できるプログラムが、『ケーキを切れない非行少年たち』でおなじみの児童精神科医である宮口幸治氏のコグトレシリーズです。
コグトレは、学校や社会で困らないために3方面(社会面、学習面、身体面)から子どもを支援するための包括的なプログラムです。
今回は社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング1 段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編から、『段階式感情トレーニング』を読み解いていきます。
「段階式感情トレーニング」が必要
感情統制の弱さは、さまざまなかたちで不適切な行動につながっていきます。
冷静な思考がうまく働くためにも、感情的にならないこと、つまり感情的なコントロールが必要です。
感情の中で厄介な“怒り”
不機嫌になる、暴言を吐く、暴れて物を壊す=(①行動の問題)
【その前の段階】むかつく、腹が立つといった怒りの感情=(②感情の問題)
【さらにその前の段階】バカにされたといった捉え方(③思考の問題)
さらに、自信のなさ、見たり聞いたり想像したりする力の弱さから、“バカにされている”ように見える(④認知機能の問題)が関係している。
また、怒りにつながる不適切な思考の例としては、『自分の思い通りにならない』というものがあります。
これは、“相手への要求が強い”“固定観念が強い”といったことが根底にあります。
“僕は正しい”、“こうあるべきだ”といった強い自己愛や固定観念が不適切な行動につながる場合もあるのです。
本来、相手が自分の思い通りに動いてくれることなんてありません。
「ぶつかったら謝るべきだ」というような、“べき思考”が強いと、自分の固定観念に反した相手の反応に対する“怒り”が生じ、その行動は“怒り”に基づいたものとなり、この“怒り”がうまく処理できないと、突然キレてしまうような事態に陥ってしまうこともあります。(大人だと「鬱」や「自分責め」や「人間関係を急にぶち壊す」などもあると思います)
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①自分の感情の理解はできているか?
お子様は(1)〜(4)のどの段階にいますか?
(1)自分の感情に注意を向けることができる
→気持ちを言葉で表すのが苦手。すぐ「イライラする」と言う。カッとするとすぐに暴力や暴言が出る。
この子どもたちは“今、自分は感情的になっている”ということに気づいていない場合がある。
何か不快なことがあると心がモヤモヤするが、自分に向き合えていないと、自分の心の中で何が起きているのかに気づかず、モヤモヤが蓄積し、やがてストレスへと変わっていきます。大切なのはまず「自分の感情に注意を向けること」です。
(2)自分の感情
ある不穏がみられた子どもに、「怒り」や「悲しみ」などの感情(もしくはその表情など)を書いた紙を示し、その気持ちにあてはまるものに○をつけてもらうような場合に、しっかりと正しく○をつけられるか?という段階
もしも(1)で感情に注意を向けられたとしても、次は“今、自分は、どんな気持ちか?”を認識することができないといけません。
今、どんな気持ちなのかをしっかり区別できますか?
(3)自分の感情を言語化できる
どうしてそんな気持ちになったのか?
こういうことがあったから、こういう気持ちになった。という経緯を、言葉やノートで表現できる段階
(4)自分の感情のコントロールができる
最終段階は、今までの段階を踏んできた中で、自分の感情をコントロールして、その不快な気持ちや怒りを減らしていくことができる段階
自分の子どもがどの段階にいるか、把握することが大切です。
他者の感情はわかるのに、自分の感情を表すこと、自分の感情に向き合うことが大の苦手です。これは1歳代から表れていました。
②他者の感情はどこまで理解できるのか?
お子様は(1)〜(4)のどの段階にいますか?
(1)相手の表情に気づく、相手の表情を読める
相手に注意を向ける、相手の表情を読むことができるか?
「悲しそう」「怒っているな」
みる、聞く、想像する力の視覚認知が弱い子は、これが難しい場合もあります。
その場合は先にCD付 コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニングの著書でのトレーニングが適切です。
【低学年向け】→CD付 やさしいコグトレ 認知機能強化トレーニング
(2)相手の感情を状況から察することができる
相手の表情がわかったうえで、どうしてそんな気持ちになったのかをその他の状況から察することができる段階
悲しそうにしている友達がいた。
その子の親に聞いたら、可愛がっていたペットが亡くなった
↓
ペットが亡くなったから悲しいんだな
「それくらいでそこまで悲しむのはおかしい」と思わないよう、ある程度の道徳的判断の発達が必要です。
(3)他者に共感できる、相手の背景まで想像することができる
この段階は一般的に“共感”と呼ばれるもので、相手の立場になって考えて感じることができるレベルです。
ペットが亡くなった友達がいた。
その子には兄弟がおらず、そのペットを弟のように可愛がっていた。
↓
一人っ子の彼にとっては仲の良かった弟が亡くなってしまったくらい悲しいのかもしれない。それだったら僕も耐えられない。
実は“共感”は大人でもかなり難しいレベルなので、子どものうちは成長の先にあると考えておく。
(4)他者の悩み相談に乗ることができる
相手の状況を理解し、共感した上で、相手に寄り添い、どうしたらいいかを共に考えていける段階です。
助言ではなく、相手がいかに自分の力で課題を乗り切っていけるかを支援していくことができるレベル
“人の気持ちがわかる”とはどの段階に我が子がいるのか、把握しておく必要があります。
こちらは著者の別書籍である境界知能とグレーゾーンの子どもたちの一コマです。
長男にこのシーンだけを見せて、セリフを読み上げました。
そして、「何でみんな逃げたのかな?」と聞いてみると、「みんなかくれんぼを始めたのかもしれない、遊んでいて気づかなかったのかもしれない」と、モブ子ども達の表情を読み取って状況を把握出来ていました。
「いちがこの男の子ならどうする?」と聞いてみたら、「遊び終わったらもう一回言ってみる」と言えました。
一応は落ち着いていたら周りの状況を理解する力が強い子なのですが、不快な刺激の矛先が自分に向けられると、途端に混乱して興奮してしまって癇癪を起こしてしまうため、実際その場で…となるとそこまで理解できるかは不明です。
段階式感情トレーニングの方法
そもそも感情表現が苦手な子どもたちが、支援現場にある「今どんな気持ち?」カードを選んで、その理由を答えるのはかなりの心理的負担になります。
そのために、感情表現が苦手な子どもの心理的負担を減らすために、段階的にトレーニングを積む必要があります。
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そのために「段階的に」自己の感情をコントロールできるようになるまで支援する必要があります。
(1)この人はどんな気持ち?ー他者の表情・状況理解(1人)
自分の気持ちを言うのは心理的負担がありますが、写真やイラストを見てどんな気持ちだろうなと想像するのはそれほど困難ではありません。
まず自分の感情に向き合う前に、他者感情を表現することから始め、感情を表現することの抵抗感をなくしていくことを目指します。
感情は顔だけでなく、手足や身体全体でもサインを出していることの理解も促していきます。
上記はサンプル画像です。
社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング1 段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編を購入すると様々なトレーニングができます。
特にこのおじさんの表情にストーリーをつけて感情を表すのは、大人でも難しいと思いません?
(2)この人たちはどんな気持ち?ー他者の感情・状況理解(複数)
次に、複数の人たちが何か話し合っている光景を想定します。
“それぞれどんな気持ちか?何があったか?”を考えてもらいます。
その人たちの関係性やその場の状況を理解して気持ちを想像する必要があるため、1人の時よりも難しくなります。
私たちは常に複数の人たちの気持ちに瞬時に理解して対応していくという、とても高度なことを要求されています。ここがうまくいかないと対人関係のトラブルに繋がる可能性があるので、ここをしっかりトレーニングします。
(3)感情のペットボトルー感情コントロールの動機づけ
いよいよ自分の感情に目を向ける段階です。
身体を使って、「気持ちを溜め込むのは辛いことだ」と身体で感じさせます。
次にペットボトルを1本ずつ袋から出していくと楽になること、つまりは感情を表現すると楽になることを体感してもらいます。
細かい声かけの仕方などは社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニングを見る必要があります。
(4)違った考えをしてみようー自己感情の理解・表現・思考の修正
自分の感情を表現する段階です。
自分の思考、感情パターンを知り、否定的な思考を修正して感情を変えていく、認知行動療法を利用します。
怒りの不快な感情を抑えるには
・スポーツ
・不快なことが生じる状況を避ける
・得意なことを見つけて自信をつける
・誰かに相談する
・我慢する
・怒りが生じないように考え方を変える
最後の『怒りが生じないように考え方を変える』という方法が1人でできて即効性があり、継続して使えるもので最も効果的な方法です。
「違った考え方をしてみよう」のシートを使って、出来事に対する考え方・捉え方(固定観念)を変えることで気持ちをコントロールしていきます。
状況はなにも変わっていなくても、考え方を変えるだけで気持ちも変わることを体験してもらいます。
このトレーニングは十分な時間を取り、終了する目安は違った考えをシートに書かなくても、頭の中で思い浮かべ、怒りなどを抑えることができるようになることです。
週1回の取り組みで、3ヶ月は続けましょう。(回数でいえば10回以上)
(5)思いやりトレーニングー他者への共感、自己感情コントロール法の確認
感情トレーニングの応用段階です。
友達の困った状況を設定し、その中で友達の感情に寄り添い、アドバイスすることで、他者への共感力や思いやりの力を養います。
今までのトレーニングの応用で、その状況を読み取り、怒りや悲しみなどの感情を抑えるためにどう思考を変えたらいいかなどを考えてもらいましょう。
さらに、他者へ適切にアドバイスができるように、より現実的・具体的に考えることで自己の感情のコントロール方法も再確認し、定着できることを目指します。
Aさん(君)が、B君とC君に相談を持ちかけ、B君は言われたら嫌な解答、C君には「相談して良かった!」と思えるような解答を書いて考えていきます。
相談して良かった!と思われるコツは『まず共感すること』です。
いきなりアドバイスをされたらムッとしてしまいますよね。
なかなか大人でも頭を捻らせますワークです。
おまけ(危険予知トレーニング)
本著(社会面のコグトレ①)では上記までの「段階式感情トレーニング」以外に「危険予知トレーニング」というワーク(トレーニングシート)があります。
人の意図に反して事故を起こしてしまう状況のことを「ヒューマンエラー」といいます。ヒューマンエラーにおける情報処理過程は、コグトレの基礎力である認知の情報処理過程とほぼ同様に考えることができます。
しかし、子どもの場合は危険場面に対応する知覚や注意力、記憶力が十分に備わっているとは言えないため、ヒューマンエラーの過程によるエラーとは違った視点でとらえる必要があります。
事故に遭わないためには、いかに、予め危険を予測できるかかがとても重要です。
コグトレではリスクを他者に適切に伝える方法として、「リスクコミュニケーション」という方法を用います。
リスクコミュニケーションは、リスクを一方的に伝えるのではなく、リスクにさらされる人々に対して十分な情報を提供し、その問題に対する理解を深めてもらうことです。
子どもにわかる言葉を用いて、何が危ないのか、その理由を考えさせ、そして危ないことが起きないようにどのように行動したらよいかを問い、理解させることにあります。
上記のようなコピーができるワークシートが16枚も社会面のコグトレ①に載っています。
そのほとんどの文末には「○分後に救急車が来ました。」
これだけで、HSC気質が強い長男は「怖い。聞きたくない」「夢に出そうだからやめて」と言って、このトレーニングはできませんでした。
さいごに
コグトレシリーズや著書の本は、私も何冊か持っています。
長男はなかなかワークに取り組んでくれませんが(^_^;)
不器用な子どもたちに幸あれ!
お読みいただきありがとうございます。
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